小樽の水産加工品〜小樽の水産加工の技術

独自に開発し、長年培ってきた技術が製品の特色に

 小樽では明治初期から大正時代にかけて、ニシン漁の全盛時代が訪れました。前浜から水揚げされるニシンは本州へ輸送するために、身欠きニシン、塩数の子、鰊油などに加工され、江戸時代には北前船で、明治時代に入ってからは汽船や列車によって、遠くは関西方面まで送られ、東京、大阪、京都などの大都市では、高級食材として取り引きされていました。このようにニシンの加工技術を元に、小樽の水産加工の技術は古くから発達しました。

●かまぼこ製造の技術について

 小樽を代表する名産品「かまぼこ」の製造は、昭和30年代にピークを迎えます。かまぼこ製造が栄えた要因としては、資源豊かな日本海に面し、原料となるすり身の確保が容易だったこと、古くから船乗りたちが「東の小樽、西の神戸」と称賛する水があったことが挙げられます。
 港に近い利点を活かし、小樽で水揚げされるスケソウダラ、ホッケ、高級かまぼこに使用されるワラヅカを、冷凍せずに生のまま加工できるため、素材の味を落とすことなく製品化できたのが強みになりました。かまぼこは魚肉を擂り潰し水や塩を加えて、さらに調味料を加えて擂り潰していく擂潰と呼ばれる工程を経てつくられます。市内の製造工場では、擂潰時に調味料の加減ではなく、練り具合で味を決めていくところや、代々伝わる石臼で擂り上げているところ、さらに職人が一つ一つ手作業で成形しているところもあります。その優れた技術により生み出された「かまぼこ」は全国の品評会等で高い評価を受けています。

かまぼこ製造ライン
製品

●飯寿し(いずし)製造の技術について

 「飯寿し」は、冷凍保存の技術がなかった時代に、魚を長期保存するために作られた北陸地方の郷土料理であったといわれています。作り方は明治以降、多くのは移住者によって伝えられました。ニシン、紅サケ、ハタハタ、ホッケなどを野菜、米、酢などに漬け込み、麹で熟成させる発酵食品です。市内の製造工場では道産の野菜、米、麹だけで漬け込み、乳酸菌の状態を維持するため、湯を循環することで温度管理を厳重に行う熟成室で通常より短い期間で発酵させる技術を用いているところ、昔ながらの木樽を利用して、「むろ」で、塩、酒、糀だけで発酵させ、添加物を使わずに製造しているところもあります。

漬け込み作業風
紅鮭飯寿し

●その他の技術について

 目覚ましく進歩している冷凍技術は、最新の機械を導入するなど、工夫を重ねています。国内で初めて生イクラの冷凍保存に成功し、独自ブランドを確立したり、-196℃の液体窒素ガスで超特急凍結の技術を用いたり、独自の解凍技術を持ち、近海産の生ものと遜色のない味わいを再現している企業もあります。加えて、多くの現場で活躍するのは地元のベテラン主婦たち。切る、開く、中骨を取るなどの前処理、成形、フライの衣漬け、樽詰めなど、熟練の技を持った女性たちが手作業で丁寧に作っています。

【参考文献「小樽の水産加工業―小樽ものづくりの原動vol.3」
 写真「小樽の水産加工業―小樽ものづくりの原動vol.3」より転用】